①VT(目視検査)
非破壊検査の基本です。目視にて腐食・変形・変色・割れ等の異常部の検出を目的に実施します。時には触手も使い異常部のスケッチを取り、写真に納めて報告します。また狭くて人が入っていけない場所やチューブの内面などファイバースコープ(内視鏡)を使って観察することもあります。簡単そうに見えて知識と経験そして鋭い観察力を要する意外と難しい検査です。また目視ではどうにも観察できない場合、次に紹介するPT,MT,UT,RT検査そして金属組織検査(SUMP法)等を行います。
外面目視検査/タンク内部の孔食
②PT(浸透探傷検査)
表面に開口した微細な「きず」の検出に優れた検査です。主に鉄やステンレス鋼の溶接部検査に使われますが表面状態が滑らかであればプラスチックや塩ビ製品などにも適用できます。前処理(試験体表面の油脂分や付着物の除去)⇒浸透液塗布(赤色)⇒余剰浸透液除去⇒現像剤塗布⇒観察⇒後処理(現像剤落とし)の手順で行い、「きず」(欠陥)を検出すると下写真のような赤色の指示模様が現れます。非破壊検査技法の中では需要の多い検査です。
応力腐食割れ(SCC)検出
③MT(磁粉探傷検査)
磁石の特性を活かした検査技法です。試験体が強磁性体(磁石に付く物)であれば検査可能で磁化装置により磁化して磁極(N極、S極)に集まる磁粉により「きず」(欠陥)の検出を行うものです。表面及び表面近傍の「きず」検出に有効であり、特に割れ(クラック)の検出に優れています。当社では極間法とプロッド法に対応しております。極間法は鋼製石油タンクの底板溶接部の検査に広く使われておりまたプロッド法は主に水力発電所の部品検査、中でも鋳鋼・鋳鉄品の検査に使われています。
割れ検出
④UT(超音波探傷検査)
身近では深山の中で大声で叫ぶと「こだま」が返って来るのと同じで、音波が密度の異なる物体にぶつかると反射して戻って来る原理を利用しています。超音波探傷器と探触子(振動子)を使い金属中に振動(超音波)を入れ反射されて戻ってきた超音波より反射源の位置(距離・深さ)・大きさ・形状等を評価します。溶接部の検査に使われる斜角法や材料の素材検査や厚みを測定する垂直法などがあります。最近ではフェーズドアレイ超音波探傷法などデジタル画像による可視化も進んでいます。
超音波フェーズドアレイ探傷(貫通孔検出)
⑤RT(放射線透過検査)
一般的には健康診断で見るレントゲン撮影と同じで、それを工業用に応用したものです。通常は溶接部の検査に用い、溶接内部の「きず」検出を目的に実施し、規格基準に基づき合否判定等も行います。当社ではX線発生器2台所有し(200KVP・300KVP)、鋼材で概ね45㎜程度まで撮影は可能です。また近年ではフィルムのデジタル化(イメージングプレート・フラットパネル等)も進みリアルタイム撮影や保温下の配管腐食調査、減肉調査など対応も広がっています。当社でも可能なように準備を進めています。
溶接部の溶け込み不足
⑥SUMP(金属組織検査)
金属表面をエッチング加工(薬品による腐食作用を利用した溶解加工)してフィルムに転写し顕微鏡で金属組織や「きず」を観察するものです。非破壊検査にて「割れ」を検出した際に先端部や周囲の組織から「割れ」発生の原因の推定や機器の継続使用の可否判断に使われることもあります。エッチングに用いる試薬では、鋼用にナイタール液、ステンレス用にシュウ酸(電解エッチング)及び王水等を使用しています。顕微鏡観察写真は通常25~50倍・100倍・200倍を目安に報告書に添付しています。
割れ先端部ミクロ写真(SUS304)
段状組織 応力腐食割れ(SCC)